その時は、いきなりきた。ズシッという手応えを感じた右腕は肩の先30センチから上がらない。その先につながる2号の磯竿は半円を越え、さらに曲がろうとしている。一瞬よぎった根掛かりの疑いは、次の瞬間竿を持つ手に左手を添えねばならないことで消え去った。
大物。
それまでつり上げた50バスとはあきらかに違う手応えに60の期待が浮かび上がる。しかし、まずは目の前のこいつを上げることが先だ。必死に竿を支えながら、戦略を練る。運悪く、掛けた場所は船の間。係留ロープが前後に張り巡らされている。走られたら終わりだ。ここは2号の竿と2.5号のハリスを信じて踏みとどまるしかない。奴との綱引きが始まった。動きを封じられた奴が首を振る。その度に腰を落として踏みこたえる。幾度かのやりとりを経てその巨体が見えるのにどのくらい時間が掛かったのだろう。
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