ブラックバスが在来魚種の生態系に及ぼす悪影響について議論されて久しい。
関西では、琵琶湖における固有種や在来種への食害が古くから大きな問題となっており、今日まで関係当局や民間団体によって様々な取り組みがなされてきた。今や琵琶湖のみならず、関西の湖沼や河川でバスを見かけない場所は非常に少ないといっても過言ではないだろう。
私の住む京都市北区は、昔から農業用のため池が多く、今日でもいくつか残っている。私が20代の頃まで、フナやコイ、モツゴ、モロコ、ドンコ、ゴリなどを釣って遊んだ池などは、今やバスとブルーギルだらけであり、フナやモロコなどは見る影もない無残な有様だ。さらに魚類のみならず、トンボが驚くほど減少したことに加え、かつては珍しくなかったタガメやゲンゴロウなども、池のどこを探しても見当たらない。
さて、今回は昨年10月に起きた、渓流釣り師とアユ師にとって衝撃的な出来事を紹介したい。
それは、京都鴨川のアマゴが9月末日で禁漁となった4日後のことだった。私は毎年渓流シーズンが終わると、釣り場周辺のゴミの状況を確認して回ることにしているため、下流から車で上流へ向かい、大岩堰堤の横に車を止めて、堰堤の上をふと覗き込んだときのことだった。堰堤の溜まりに見慣れない魚があちこちで動き回っていた。何の魚だろうと観察していると、「もしや!」と思った。(私はこの川の魚をほぼ熟知しているため、その魚が本来ここに生息する魚ではないことは一目でわかった。)
どう見てもブラックバスだ。もしこれがスモールマウスバス(コクチバス)なら大変な事態だと思い、急いで帰宅して釣具とミミズの餌、およびルアーのタックルを用意し、再び堰堤へと引き返した。そしてその日は、餌釣りおよびルアーで問題の魚を6尾釣り上げた。魚は紛れもなくコクチバスであった。
私は当初、誰が何のためにこんなことをするのかという虚脱感に襲われたが、その後、アマゴを襲うコクチバスの姿を想像し、言い知れぬ怒りが腹の底から湧き上がり、体が熱くなり、震えたのだった。
これは明らかに密放流であり、言うまでもなく違法行為である。
私はその後、2回にわたりこのバスを釣りに来た。川は禁漁になっており、竿を出すのは気が引けたが、状況を考えれば止まってはいられない。3回の釣りで計14尾のバスを駆除した。ほとんどがコクチバスで、体長は20cm前後であった。(なぜか、どう見てもオオクチバスと思われる個体が3尾含まれていた。) この事実は後日、漁協にも報告済みである。漁協では、私が禁漁後に竿を出したというルール違反などは問わず、電話口で京都弁の「おおきに!(ありがとうの意)」を連発して感謝され、今後の協力を要請された。
コクチバスは冷水に強く、流れの速い澄んだ水を好み、その習性はオオクチバスよりも獰猛であるといわれている。アユはもとより、アマゴをはじめとする渓魚にとって、重大な脅威を及ぼすことは確実だ。今回はどうやら密放流の直後の現場に出くわしてしまったようだが、この川の他の部分にどれほどの密放流が行われたのか、想像すらつかない。この川の本流と各支流は膨大な距離に広がっており、漁協だけの力では到底調査することは不可能に思われる。これには釣り人の協力なしには無理だろう。
この密放流が個人的に行われたのか、組織的に行われたのか、今となっては私には分からない。ただその後、全国各地の情報を集めたところ、各地ではかなり組織的にバス関連の釣り団体や、関連の釣具製造業者の手によって密放流が行われているという情報が入っている。したがって、この川も最悪の状況を考慮しておく必要があるだろうと考えている。
要は、密放流を許さない環境と世論を形成することが重要だ。そして、この問題を漁協だけに押し付けないことが大切である。日本古来の自然と生態系を大切にし、保全することは、決して漁業組合だけの問題ではないはずだ。
いわばこれは国民的課題ではないだろうか。アマゴをはじめとする渓魚は氷河時代の魚だといわれている。その発生の起源は数十万年前であり、氷河時代が終わり海の水温が上がったために、海に下れなくなった個体が川に残り、陸封型となったと言われている。
この川の上流に生息するオオサンショウウオは、一億年前の恐竜時代の生きた化石と言われている。

このような貴重な生き物の幼魚や幼体が、密放流されたコクチバスの犠牲になることは断じてあってはならないことだ。
私は今年も渓流のゴミ撤去作戦とともに、ブラックバス駆除作戦を協力者とともに続行するつもりだ。全国の河川において在来種の生態系が生き延び、次の世代へ引き継がれることを熱望してやまない。